水面下

言い訳と記録 @underwaterilies

私の形

『her』という映画を観た。

ライターの生湯葉シホさんが一番好きな映画だと話していて、前々から興味があって、やっと観た、という感じでみた。


エンドロールで泣いた映画は初めてかもしれない。

アマプラで観たので、いつでもエンドロールをストップできるのに

私は緑色のソファに沈んで、黄色い花のクッションに肘を立ててスマホを目の前にかざしたまま動けず、ずっと、涙を流していた。


ひとくくりにすれば、人間と人工知能(AI)が恋に落ちる話だ。

日本人なら綾瀬はるかのアンドロイドの映画を思い浮かべるんじゃないかな。

ある日突然出会った人工知能と恋に落ち、困難をその知性や強さで乗り越えて、人間になってハッピーエンド。

そういうハッピーエンドも好きだ。楽しくていい。

けれど、この『her』のハッピーエンドはそういうのじゃない。でも誰が何と言おうとハッピーエンドだった。



自分の日記にはあらすじをあれこれ書いてまとめようとしたが、まとまらなかったので、本当にざっくりと要約すると、

人間であるセオドアが、人工知能であるサマンサと恋に落ちる。

その愛はサマンサは自分自身を知るきっかけとなり、セオドアか人生を前に進めるきっかけとなる。という感じ。


なぜか、私が書くとこの素晴らしい物語が陳腐なラブストーリーになってしまうのだか、全然そうではないので、観れるひとはみてほしい。Amazon prime videoにあります。

サマンサの優しいハスキーボイスもとても素敵で、彼女にどんどん惹かれてしまう。


始め人間になろうとするサマンサは、勿論肉体がないので、どうにかしてセオドアに肉体をもって関わろうと考える。

でもAIであるサマンサを愛したセオドアは、彼女に人間のフリをするのをやめるように言ってしまう。

彼女はその言葉に混乱し傷ついたけれど、それから自分以外のものになろうとするのをやめよう。と思うようになる。

そうして吹っ切れたサマンサは、本当に魅力的で素敵で、自分の能力を最大限に活かしてセオドアをサポートし、彼ともっと親密になり、彼の友達とダブルデートしたりもする。

セオドアの愛が彼女の背中を押したのだ。

同時に、彼女の愛はセオドアの人生に再び光をもたらすものになる。


その後のシーンで、何気なくセオドアがサマンサに、何をしている?と尋ねると

彼女は、ピアノの曲をかいているの。私達2人で映った写真がないでしょう?だからその代わりよ。と答える。

その曲を2人で聴きながらお互いに世界を見つめ合うシーンが美しくて愛に溢れすぎていて、胸が一杯になった。



私はこの物語で、愛の形は本当に無限なのだ、と思ったのだ。

定まった形なんて一つもなくて、その人それぞれが持つ愛の形が、本当の、真実の愛なのだと思った。


実をいうと、私は恋人ができたことがない。

特別に誰かを愛する、ということが中々できない。


私の愛は家族に向き、友人に向き、物語や絵や音楽に向き、それで手一杯で

他に、どう私の愛をさけばよいのか、わからないのだ。


でも、私は恋愛というものをしないけれど、自分に愛がないとは思わない。


ずっと、皆のように誰かと恋愛関係を持てない自分は未熟で劣っているのだと考えていたけれど、だけど、私も何かを愛しているのだ。いつも全力で。私の抱えているものを、きちんと愛してきた。

これが私の愛で、それは真実だ。


すれ違って、傷つけあってしまい、サマンサはセオドアにこう話す。

「心は四角い箱じゃない。

愛すれば愛するほど、愛が膨らんでいくの。

私とあなたはちがう。けれどあなたへの愛は深まるばかりよ。」


どんな人でも何かを愛すると、傷つく瞬間がきてしまう。

だけど、私を守ったり傷つけたりしてきたその愛が、私を形作るのだろう。

これからも、私は家族、友、好きなものやこと、もしかすると特別な誰かを愛するんだと思う。そうして、愛がかつてのものになったりするんだと思う。


けれど、それらの愛は私を形作り、誰かを形作り、どこかに残っていく。

セオドアの愛が、サマンサに彼女自身を愛し、知る手助けをしたように

サマンサの愛がセオドアの人生に光をもたらし、前に進めたように


私達それぞれの真実である愛が、私達を形作っているのだろう。


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